The Eighth Day / 八日目の蝉 -瀬戸内海が関わる映画-

2023.09.01

The Eighth Day / 八日目の蝉 -瀬戸内海が関わる映画-

 

 

 

”The Eighth Day / 八日目の蝉”

 

2011年公開の邦画です。

 

 

「赤ちゃんが生まれたと知って、

一目だけ赤ちゃんを見たいと思いました。

見たら一切諦めがつくと思いました。」

 

 

生気のない声だが、目の奥に確固たる意思が宿る希和子が証言台に立つシーンから映画は始まります。 

 

主演は永作博美さん演じる希和子。

そして井上真央さん演じる薫。本名は恵理菜。

 

希和子は妻帯者である丈博と不倫の仲でした。
丈博といつか結婚できると信じ、ついに子供を授かるのですが、今は結婚できないからと堕すことを強要されます。

身体と同時に時間と心も奪われた矢先、丈博の妻である恵津子が妊娠したことを知って自暴自棄となった希和子は犯行に及びました。

 

雨が降る中丈博の自宅に希和子が侵入します。

生まれた丈博の子の顔を見れば全てを諦められると思った希和子でしたが、
赤ちゃんを見たことにより、希和子の中で一気に母性が芽生えました。

我が子のように抱き、コートでくるみ隠し、不倫相手の子供を誘拐します。

そしてこの誘拐された新生児が恵理菜であり、希和子はかねてより女の子の子供に名付けたかった薫という名前を与えました。

 

希和子は友人に犯行の一部始終を隠し匿ってもらいますが、テレビにて幼児誘拐として刑事事件化されたことを報道で知り、身の危険を感じ逃亡を重ねます。

 

最終的に辿り着いた場所は、希和子と薫にとっての安息の地。 

香川県の小豆島でした。

 

 

 

実際の撮影も小豆島内で行われました。

映画をご覧いただければわかりますが、とにかく瀬戸内海の描写、映し方が秀逸です。無理なエフェクトを施すことなく、常に当たり前に存在する”日常の瀬戸内海”が映されています。

海だけでなく住宅街や棚田、寺院など、華美に演出しない小豆島そのままの風景が自然に映し出されますが、どれも瀬戸内の島らしく穏やかで心地いい描写がいくつも見られます。

働く人、暮らす人、そして島で育った子供達の暖かく受け入れ接する島の人柄が、血の繋がっていない希和子と薫を本当の親子へと繋がせていきます。

 

前半の混沌とした緊迫感のあるシーンとは相反し、小豆島では何にも恐れることのない幸福な日常が瀬戸内海の背景とよく調和していました。

 

 

時は経ち、薫 / 恵理菜は大学生。

奇しくも、自身を誘拐した犯罪者である希和子と同じ運命を歩むことになった薫は、誘われるように記憶の変遷を辿るために小豆島へ向かいます。

誘拐されていた幼少期当時のことを何も覚えていなかった薫ですが、小豆島の風景が眠っていた記憶を呼び覚まします。

 

 

希和子と薫の穏やかな日々が終わりを迎えます。

二人の最期、写真館で家族写真を撮るとき、希和子は薫の手にあるものを宿し託しました。

それを受けとったことを思い出した薫は、希和子がしてくれたそれのように、世界で一番好きなものに同じことしてあげようと決意を固めるのでした。

 

 

 

 

どの被害者の立場になって感情移入するかで見解が変わりそうな内容ですが、この映画で登場する女性は、形と影響は違えど全員が被害者です。

 

ただ私が映画を観た当時、希和子はどういう感情だったのだろうかと不思議に思いました。

希和子が誘拐した後に約4年の間、薫を育てました。それは自身が堕した子供への贖罪の気持ちから湧き起こった行動と考えることもできるのでしょうが、希和子の言葉や表情からそれらを感じることはできず、どちらかというと本気で薫の母親になろうとしていたように見受けられました。

もしくは自身の辛い経験から、歪みあう大人の汚れた環境から引き離し守ってあげたい衝動に駆られたのかもしれません。

 

昔、確か2010年ごろに「mother」というドラマがありました。内容は八日目の蝉と近しい内容かと思います。

松雪泰子さん演じる孤独な女性が、ネグレクトにより苦しむ生徒を誘拐し親子になろうとするドラマです。

このドラマの最終回の台詞で、

「世の中には3つの性別が存在する。男と女と、”母親”という性別だ。」

と言っていたのが印象に残っているのですが、それほど母親という人格、母性という感情は、制御できない衝動を起こさせるほど女性を揺さぶる性別なのだろうかと考えさせられました。ただ男の私には到底想像できない境地なので、この見解について覆うことがあれば、どなたかご意見お教えください。

 

 

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話は変わりますが、皆様「駆け落ち/逃避行/夜逃げ」となったら、どの地域を思い浮かべますか?

時代遅れの私や友人なんかは

「駆け落ち逃避行って言ったら東北だろ。寒くて雪が降る地域。
あったかい地方だと逃避行感出なくね?」

なんて会話を昔してました。

多分昔の昼ドラや火サスなどの影響でしょうが、確かに北に行くイメージがあります。

でも八日目の蝉を見たら、温暖な地域に逃げるのもアリだなーと新しい価値観を与えてくれました。

 

他に逃避行感出る地域ってありますかね?

 

あ、北陸山陰も逃避行感あるか。冬の風強そうだし。