
The Talented Mr. Ripley -1999- / リプリー -海が関わる映画-
The Talented Mr. Ripley / リプリー
1999年公開の映画。
1960年にアラン・ドロンが演じたフランス / イタリアの合作映画「太陽がいっぱい」と同じパトリシア・ハイスミス著書の原作を元に作られた映画です。
リプリーの製作に、”The Way We Were / 追憶” や ”Out of Africa / 愛と悲しみの果て” という大ヒット作の監督を務めたシドニー・ポラックが携わっています。作品の内容はそれらと大きく違いますが、演者や演出の色気や眩しさなどはシドニー・ポラックらしさが随所にうかがえます。
リプリーは、とにかく主演のキャスティングが秀逸です。
Matt Damon
Gwyneth Paltrow
Jude Law
Cate Blanchett
若かりし4人の錚々たる豪華な顔ぶれが一堂に介する映画というだけで、非常に見る価値があります。
This film, released in 1999, is based on the same Patricia Highsmith novel that inspired the 1960 French-Italian co-production Plein Soleil (Purple Noon), in which Alain Delon famously played the role of Tom Ripley.
The Talented Mr. Ripley was produced by Sydney Pollack, the acclaimed director of cinematic classics like The Way We Were and Out of Africa. While the story is quite different from those titles, the visual allure, sensual direction, and the charisma of its cast unmistakably bear Pollack’s signature.
What truly elevates Ripley is its exceptional casting.
Matt Damon
Gwyneth Paltrow
Jude Law
Cate Blanchett
These four iconic actors, in the early days of their careers, come together in a film that’s worth watching for that reason alone.
” Everybody should have one talent. "
時代背景は50年代。
全ての発端は、マット・デイモン演じるトム・リプリーの影武者の仕事から始まります。
ニューヨークのオペラ座でボーイとして働くトム・リプリーは、貧しく孤独な青年でした。
怪我をしたピアニストの代理者として演奏したパーティで、開催主である造船会社社長のグリーンリーフ氏と知り合います。
グリーンリーフ氏はピアニストから借りたカレッジブレザーを着るトムを見て、息子のディッキーと同じ大学の元同級生だと勘違いをしてしまいます。
トムは元同級生であると偽り話を合わせたところ、グリーンリーフ氏からイタリアで遊び暮らすディッキーを連れ戻して欲しいという依頼を、多額のギャランティーと引き換えに受けることになりました。
Set in the 1950s, the story begins with Tom Ripley, played by Matt Damon, a poor and lonely young man working as an usher at the opera in New York. By chance, he meets Mr. Greenleaf, a shipbuilding magnate, at a party where Tom is standing in for an injured pianist. Wearing a borrowed Princeton jacket, Tom is mistaken for one of Greenleaf’s son Dickie’s college friends.
Sensing an opportunity, Tom goes along with the misunderstanding. He is soon offered a generous sum to travel to Italy and convince the wayward Dickie to return home.
映画撮影の舞台は南イタリア。
トムは同じ大学出身だと偽ってジュード・ロウ演じるディッキーに近づきます。
ディッキーはグウィネス・パルトロゥ演じる婚約者のマージと、海を楽しみながら親の金で優雅な日々を送っていました。
内向的で冴えない雰囲気のトムを面白く思わなかったディッキーでしたが、彼の ”Talent” に興味を持ち始めたところから、二人の距離は一気に近く深くなっていきます。
ともに暮らし、協力して父グリーンリーフから金をまき上げ、セイリングに出かけ、時にジャズクラブでセッションを交えたりなど、常に行動を共にしました。
The film is set in Southern Italy, featuring a vivid midsummer backdrop with intense sunlight and the brilliant blue sea.
Tom falsely claims to have attended the same university as Dickie to get closer to him. Dickie, along with his fiancée Marge, played by Gwyneth Paltrow, spends luxurious days enjoying the sea in this picturesque setting.
Initially unimpressed by the introverted and unremarkable Tom, Dickie's interest is piqued when he discovers Tom's talent. As they start living together, collaborating to extract money from Dickie's father, sailing together, and occasionally engaging in jazz sessions at clubs, their bond deepens and becomes increasingly close.
My Funny Valentine
次第にトムは、ディッキーに対し特別な感情を抱くようになります。
旅の途中。
広大な海の中、ボート上で自身の思いの丈を打ち明けるのですが、ディッキーの嘲りの連発により逆上したトムは感情を爆発させてしまいます。
転覆する船を前に、人としての一線を超えてしまったトムは事の経緯を正当化させるため
「他人になりすまし、他人を欺く」という自身の ”Talent" を、意に沿わぬ形で遺憾無く発揮し、ディッキーを装う二重人像の生活を送ることになります。
During a tense moment at sea, Tom confesses his emotions. Dickie mocks him, triggering Tom’s suppressed rage. In a fit of passion, Tom crosses a line he can never uncross.
To justify what follows, Tom’s true "talent" comes to life: the ability to impersonate, deceive, and inhabit another’s identity. He slips into Dickie’s life, wearing his clothes, forging his signature, and constructing an alternate reality.
ディッキーとして生活するトムは、ローマでケイト・ブランシェット演じるメレディスと会います。アメリカにおいて繊維産業トップであるローグ家の令嬢メレディスは、トムを造船会社グリーンリーフの御曹司ディッキーだと思いこんでしまい、トムの描くシナリオによって振り回され利用されてしまいます。
警察、探偵、グリーンリーフ氏、友人、そしてマージとメレディスも含め、全員を巧みに欺き、辻褄を合わせ、様々な犠牲者を出しながら自身の罪を隠し通し、潔白であることを真実にさせます。
劇中では常に窮地に追い込まれ、緊迫感に満ちたトム・リプリーの日々がラストまで描かれます。
The Talented Mr. Ripleyは非常に暗い内容の映画ですが、視覚的には煌びやかで美しい描写が随所に見られます。
ナポリ近くにあるポジターノという町で撮影されたようですが、華美でない田舎町です。そしてそこで暮らす人々、トムとディッキーとマージの自然な服装や振る舞いが、景色や町並みと調和していて非常にいい雰囲気でした。
Though The Talented Mr. Ripley is deeply psychological and dark in tone, it is visually dazzling. Filmed in places like Positano near Naples, the setting is modest, even rustic—but radiates a timeless elegance. The clothing, gestures, and atmosphere of Tom, Dickie, and Marge feel deeply at home in this sunlit Mediterranean backdrop.
この映画は出演者4名のルックスが醍醐味です。
その中でも1番はジュード・ロウでしょう。
御曹司という恵まれた出生を利用し、悠々自適に不自由なく暮らす傍若無人振り。
夏の海と同じくらい輝きを放つ笑顔と焼けた肌。
そしてイタリアの町と調和する土臭く粗野なファッションでありながら、金持ちらしさが垣間見える品に満ちた着こなしと佇まい。
この映画でジュード・ロウという俳優に魅了された人が多いのも納得できます。
男なら、この映画のジュード・ロウを必ず見るべきだと思います。
主役のマット・デイモン。
マット・デイモンといえばボーンシリーズが代表作でしょうが、リプリーでの若き時代は、あのスマートでタフガイな印象は微塵も感じません。
劇中の、50年代の若者らしいアメリカントラッドスタイルで、絶妙に冴えない野暮ったさ溢れるファッションもトム・リプリーの人物像をうまく表現しています。
「自身は何者でもない空っぽの人間だから、他者になりきり他者の人生を歩みたい」
という願望を抱くトムの思想やキャラクターと非常にマッチしていました。
そしてディッキーに成りすまし装う生活を始めたトムの変貌の振り幅です。清潔さとエスタブリッシュメントを感じさせる着こなしが、トム・リプリーの "Talent" の秀逸さが表現されています。
リプリーは日本ではあまり知られていない作品ですが、90年代の名作の一つとして評価されています。
孤独を余儀なくされた、若い男の罪と人生に感情移入するのか嫌悪感を抱くのか、はたまた自分と重ね合わせ同情してしまうのかは人それぞれでしょうが、ご覧になった方はぜひ感想をお聞かせください。
Despite being less known in Japan, The Talented Mr. Ripley is a hauntingly beautiful film.